旅行やお祝いの写真は懐かしく楽しい写真だ。それ以上に普段の食事風景や寝転んでテレビを見ているところなどを写した写真はとても懐かしく私は好きだ。
知人の家に有名なあの山下清が来るというので私もそのお宅に出かけていった。目の前で色紙に次々とスケッチを描いていた。そのお宅に生まれたての子犬がいて、ご主人が山下さんに名付け親になって欲しいと申し出た。すると山下氏は一瞬にしてポチと名付けた。一瞬沈黙した。
やっと外に出て遊べるようになった幼い娘は数匹のアリが弱ったミミズを引きずって行くのをじっと見ていた。ミミズは弱って体から体液を出していた。娘は母親に言った。
アリさんが皆でミミズさんを病院に連れて行くのかな。
近くの公園に小高い山と池があり、地面にはどんぐりの実が落ちていた。どんぐりころころの歌にぴったりのところだ。娘とどんぐりの実を拾い集め、家に持って帰って見てみると幾つかの実が芽を出していた。妻ともう芽が出ているんだなと感動していると。不思議そうに娘が言った。
ここで私たちを見ているの。
子供が成長して自分で行動するようになると親の最初の心配事は交通事故だろう。我が家も例外でなく、息子に言い聞かせた。道路を渡るときは両側を良く見て渡るのだよと。あるとき母親は道路を渡る息子を見て驚いた。道路の真ん中までに飛び出し両側をよく見て渡った。よく見ろとは言ったが。
私が中学の頃、大衆車時代がやってきた。近所の家はそれぞれピカピカの車を購入した。
ブルーバードはウィンカーを出すとオルゴールが鳴る仕掛けになっていた。そのことを近所の老人に話した。あの車は曲がるときにオルゴールが鳴るんだよ。すると老人は言った。よくわかるな。
私が小学生のときに、テレビが普及し始めそれぞれお気に入りの番組を毎週楽しみにしていた時代だった。相撲、プロレス、連続ドラマそして洋画、特に名犬ラッシーやララミー牧場などは欠かさず見ていた。すべて日本語吹き替え番組だったが、近所のお年寄りが洋画を見て、外人は皆日本語がうまいと感心した。
春になると毎年のこと、夜さかりのついた猫がギャーオ、ギャオーを泣きわめく。いつもうるさいなと思っていたが、幼い娘が言った。オカアサーン!オカアサーン!て泣いているのかな。
親子の会話でよくある話と思うが、子供がおいしそうに物を食べていると親はそれを見ているだけで満足してしまう。息子が幼稚園に入ったとき帰りに外食をしようということでレストランに入った。皆でハンバーグを食べ始め、私は息子に聞いた。どう、おいしい?すると息子はすこし面倒くさそうに
ああ、おいしいよ。自分だって同じもの食べているだろ。
私にしかられた息子は泣きながら母親のところへ跳んでいった。そして文句を言った。
なんであんな男と結婚したんだ。 余計なお世話だ。
6月になると裏庭にビワの実が沢山実る。ちょうどいい時期に鳥が来て食べていく。取られまいとテープを張ったり、網をかけたり、ボールを吊したりしたが効果がない。食べさせないことに集中してしまった。妻が、近くに余った食べ物を置くとビワの実は無事だった。
昔我が家に牛がいた。荷車を引いて畑と家を行き来していたのを良く覚えている。そのころ近所にガソリンで動く車は1台もなかった。ある日父は牛車を引いて家に帰る途中、知人に会い話し込んでしまったそうだ。しばらくして後ろを見ると牛車がいないので驚いた。急いで家に帰ると、すでに牛は車を引いて戻っていたという。現在は運転手なしで移動する自動操縦の車が研究されている。
東名高速道路が出来たとき、明治生まれの祖母を乗せて走った。しばらくして言った。
向こうからちっとも車が来ない。
出かけたときに祖父母と話をしていると、喫茶店に入ったことがないという。それではと立ち寄った。3人でアイスクリームを注文した。最初に水の入ったコップが置かれると祖母は丁寧にウェイレスにお礼を言った。ウェイトレスが行くやいなや祖父がそんなにぺこぺこするなといった。そして、あ!だだの水じゃねえ、氷が入ってると言って驚いた様子だった。グラスに盛られたアイスクリームにスプーン添えられてテーブルに置かれると二人はあぜんとした様子で黙った。どうしたと聞くと、駄菓子屋にある袋に入ったものが来ると思っていたと口を揃えていった。
弟と父は子犬を捨てに行った。当時は田舎だから犬は放し飼いで納屋あたりで子を産むことが普通だった。弟はしきりにかわいそうだ、かわいそうだといいながら捨てに行った。
そして家に帰ってみるとすでに子犬は家に帰っていた。
交差点を通過しようとすると、赤信号なのに親子がのんびり横切っていく。私はなんだこれはと思ったが本人たちは気にしていない。どうもすこし前の青信号を見て安心して渡っているようだ。信号に限らず私たちはいろいろなことで、前の記憶が頭の中にこびりついて、すでに変わってしまっていることに気づかないときがある。
母屋の裏に食事をする質素な別棟があり、脇に地面に掘った囲炉裏があった。テレビもない時代だったので冬は食後に囲炉裏を囲んで暖をとりながら色々な話をした。親しい知人がくると一緒になっていろいろな話を聞いた。どこそこの子はかわいいのでりんごのようなホッペだねといったら、おばさんは梨の様だねと言われたという。囲炉裏端でそんな話を聞いていた。
私たちは写真好きで沢山のアルバムがある。あるとき妻と新婚旅行の時の写真を見ていたら、息子が来て、自分はどこにいるのかと聞いた。
お前はまだ生まれていないんだよ というと
じゃ、ママのおなかの中にいたの。 お前なんていうことを言うんだ。
おしゃぶりをくわえヨチヨチ歩きの息子をつれて2家族、数人で旅行へいった。天気もよく、高原の気持ちいい野原でスイカ割りをすることになった。最初に目隠しをして子供たちが、そして大人が挑戦したが誰もスイカを割ることができなかった。最後に目隠しなしで幼い息子が棒を持った。すると意外なことをした。スイカの方向に歩いていくが途中から向きを変え地面を叩いた。もう一度させたが同じだった。それでわかった。目隠しをしていたが私たちの行動をみていて、棒で地面を叩くのがスイカ割りと学んだようだ。
子供たち大きくなると段々帰りが遅くなり、それに慣れない親たちは時間にやきもきする。
決まって出かける姿を見ると、早く帰って来いよという。それでも段々遅くなりやがて朝早く帰ってくる。早く帰って来いとは言ったが。
乳児は夜も数時間おきにミルクを飲む。気がついたとき私も準備し与えた。ある日家内は疲れたのか子供が泣いてもいっこうに起きなかった。そして朝起きて言った。この子夕べはよく寝たね。 え!、よく寝たのは自分だろう。
ザリガニは近くの小川で沢山獲れた。アメリカザリガニはハサミが大きく、鋏まれるとかなり痛い。振り払っても簡単には放さない。そんな時、祖父に教わった。地面に手を置け。
なるほどすぐに放す。ザリガニにしてみれば振り払われれば大変なこと、地面で安心して逃げていく。少し相手の身になって考えられるような気がした。
幼い子と寝ると幸せを感じる。娘にパパと寝ようと言うと、娘はいやだと言う。
何でと聞くと、パパはバカだからいやだと言った。娘は最近やっとしゃべれるようになったばかり。
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